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月面基地と月の利用

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NASAによる月面基地計画

人類の技術レベルは、すでに月面基地が十分に実現可能な段階に達しています。月面ロボットの開発はすでにはじまっていますし、建設・加工は地上の技術をほぼそのまま応用できますから、いますぐ月面基地の建設をはじめることは、まったく不可能というわけではありません。

アメリカの航空宇宙局(NASA)は、その実現のための綿密なプランを立て、2006年12月には14の国や地域が参加する有人月探査構想を発表しました。その構想とは、まず準備段階として無人探査を実施してから、2020年までに月面基地を着工し、4人の宇宙飛行士により基地の設営と居住用設備の拡充を完了する、というものです。その一環である有人探査プログラム「コンステレーション計画」では、打ち上げロケット「アレス」、探査船「オリオン」、着陸機「アルタイル」から成る、アポロ計画のシステムを踏襲した開発が進められていましたが、スケジュールの遅れや予算の圧迫などのため2010年に計画の凍結が発表されました。アメリカ政府はそれに代わる新しい宇宙計画方針として、2030年代半ばまでに人類火星に送り込むという、より長期的な目標を掲げています。

地球へのエネルギー供給も十分可能

月の表面には「ヘリウム3」という名の物質が数百万トンもあると推定されています。ヘリウム3は核融合炉の燃料となる物質で、1万トンあれば全人類の100年分のエネルギーがまかなうことができるともいわれています。ですから、このヘリウム3や太陽光から発電した電力をレーザーなどに変換して地球へ送電する技術が確立されれば、安全で大量のエネルギーを得ることができると期待されています。アルミ、チタン、鉄などの採掘と精製、ガラス、シリコン、セラミックなどの素材や月の環境を利用した純粋材料の製造なども可能でしょう。また、地球の6分の1の重力を利用した植物は、地上の6倍の大きさに育つ可能性があります。月で生産されたお化け野菜がスーパーの店頭にならぶことも夢でなくなるかもしれません。

スペースプレーンの月旅行も夢物語ではない

青く輝く私たちの住む地球をはじめとする、宇宙に広がる雄大な景観や、1/6の重力、そして月にいたる重力脱出の旅などが楽しめる、魅力的な月面観光も将来は現実のものとなるでしょう。研究施設の保守・運営とさらなる拡張・開発のためのビジネスとして、月訪問の需要が生じるはずです。1度に多くの人々を宇宙へ運び上げるには、垂直離陸式のスペースシャトルに代わって、水平離陸式の「スペースプレーン」が考えられています。地球の自転速度を最大限利用できる場所である、赤道近くから離陸したスペースプレーンに乗って宇宙空間へ到達。軌道上につくられた宇宙ステーションで月シャトルへ乗り換え、月周回軌道を回る月ステーションに着くと、最後に月着陸船に乗り、月面へのランディング。このような月面への旅も、未来のできごとではありますが、すでに夢物語ではなくなりつつあります。

月は天体観測の「理想郷」

月は天体観測にたいへん適した環境をそなえています。空気がないので、星からの光が途中で吸収されたり散乱したりしないで月面上に届くという利点があります。また、夜側は安定した低温に保たれるので、観測の精度の向上が期待できます。月の 裏側では、雑音となる人工の電磁波がないこともまた利点の1つといえます。このほか、地盤が安定していること、自転周期の関係で夜が14日間続くので、継 続した観測ができることなどがあげられます。クレーターの中にパネルを敷きつめれば、直径数10kmものパラボラアンテナを簡単につくることもできます。


NASAの「スペースガード計画」でも大きな役割を果たす

また、NASA地球に衝突し得る小天体が現れた場合にどう対応するか、という問題に真剣にとりくんでいます。小天体を早期にキャッチし、レーザーなどで破壊するという「スペースガード計画」は考えられている案の中の1つです。この計画においては、月から観測すれば、その小天体がたとえ太陽方向から接近してきたとしても、地球上よりはるかに高い精度で観測することが可能であると期待されています。

月面基地は、恒常的な実験設備として利用可能

月には空気がないので電磁波の吸収・放射がなく、約2週間の周期で昼と夜が続くといった特徴があります。また、重力が地球の1/6という特異な環境をもちます。太陽光やヘリウム3など、エネルギー源も豊富です。そのため、スペースシャトルで の宇宙実験などとちがい、月基地は恒常的な実験設備として使えるという大きなメリットがあります。たとえば医学的研究としては、重力の少ない環境での体内 のカルシウムの流出のようす、関節炎などのような、重力が治ゆの障害になっている病気の治療、心臓の機能と血液循環に関する研究などに成果が期待されています。

1/6の重力をいかした研究

医学以外にも、工業分野や素材分野の研究・実験にも成果が期待されています。豊富な資源や1/6という重力、酸素や水がないため資材が腐食しないといったメリットを利用して、研究設備の建設などが行われることでしょう。

月面基地の建設場所は、「極点」付近が有力

月面基地を建設する場所はどこでもいいというわけではありません。地球に面する表側の赤道近くでは、半月の昼と夜が交互におとずれ、夜の間のエネルギー供給の点で問題があります。天体観測に有利な月の裏側でも同様の問題があるほか、地球と交信しにくいという難点があります。建設ロボットを遠隔操作するためにも、交信が確保されなくては困ります。そこで有力視されているのが、「極点」付近です。地球太陽も見えるという安心感があり、宇宙船の離発着時の利便性など、有利なことも多いのです。極点をはさんで2つの地点に太陽エネルギー発電プラントをつくれば、エネルギーの安定確保が可能です。やがて月の裏側に建設されるであろう観測基地へのアクセスも容易になることでしょう。


基地建設は、無人でも数年はかかる大事業

建設候補地が決まったら、そこへロボットと原料を送りこみます。人間が居住できる施設をつくるとしたら、アポロ宇宙船で60回以上もの往復しなければならな い計算になります。無人基地はそれより少ない往復回数ですみますが、それでも数年間はかかるというたいへんな道のりです。無人の月面基地が完成したら、各種の研究・実験が始まります。並行して有人基地化の準備が進められます。酸素や水、食料などの製造プラント、熱制御設備、居住モジュールなどの建設で、大規模な資材と建設作業が必要となるでしょう。

居住施設となる円筒形モジュールは大部分が地中に埋め込まれる

居住・実験・生産のための施設は、軽量で丈夫な素材でつくられた直径5m×長さ15mほどの円筒形のモジュールをシャトルに搭載して、1つずつ打ち上げ、月面上で連結します。モジュールの大部分は地中に埋めこまれます。モジュールを安定して設置するためだけでなく、太陽から降り注ぐ宇宙線から人体を保護するためでもあります。小さな窓には厚いガラスが何重にもはめこまれることでしょう。モジュール内の与圧と生活のためには、エネルギー、酸素、食料や水が必要です。その多くは地球から運搬・補給されることになりますが、月面でのリサイクルも考えられるでしょう。