日にち

時間(JST) 内容
 1985年
6月29日   小惑星サンプルリターン研究会が行われる。
 1986年
    小惑星Anterosのサンプルリターン計画が構想される。
 1990年
工学衛星3案が提案される。その3案とは、1)金星エントリ気球、2)月面ローバ、3)小惑星ランデブー。
 1995年
MUSES-C(はやぶさ)計画の概算要求が行われる。
 1996年
MUSES-C(はやぶさ)計画が開始される。
 2000年
打ち上げの延期が決まる。目標の小惑星が、1998SF36(後にイトカワと命名される)へ変更される。
 2002年
打ち上げが再延期される。
 2003年
5月9日 鹿児島・内之浦宇宙空間観測所からM-Vロケットによって打ち上げられる。
 2004年
5月19日 地球スウィングバイ成功。イオンエンジンとスウィングバイの組み合わせは世界初。
12月9日 イオンエンジンの宇宙作動積算時間が2万時間を突破。
2月18日 探査機の軌道において、最も太陽から遠ざかる点、遠日点 (1.7 天文単位)を通過。太陽から史上最も離れた電気推進ロケットとなる。
 2005年
7月31日 3基ある姿勢制御装置のうちの1基(X軸)が故障。2基による姿勢維持機能に切り替え。
8月14日 小惑星イトカワまでの距離は約28,000km。毎秒38mでイトカワに接近。
8月28日 イオンエンジン停止。ほぼ黄道面上でイトカワへ接近をする飛行モードへ変更。
9月1日 イトカワまでの距離は1,900km、時速18kmでイトカワに接近中。
9月4日 イトカワまでの距離は約1,000km、時速約10kmでイトカワに接近中。軌道上で初めてイトカワの形状捕捉に成功。
9月7日 イトカワまでの距離は700km。
9月8日 イトカワまでの距離は約200km 。時速約7kmでイトカワに接近中。
9月9日 イトカワまでの距離は約70km。
9月10日 イトカワまでの距離は約30km。
9月12日 10:00 イトカワに到達。約20億kmを旅した後、イトカワからの距離が約20kmの地点(ゲートポジション)に到着。搭載の化学推進器による秒速7cmの減速噴射を行い、静止(ランデブー)。
9月14日 イトカワは表面に砂が少なく岩盤が露出している可能性が高いと発表。
9月30日 ゲートポジションからのほぼ全球マッピングを終了。
9月30日 イトカワから約7kmの距離(ホームポジション)まで降下。近傍観測の新段階、高緯度域や着陸候補点の詳細観測へ。地球方向(離陸側)に約5cm/秒の軌道微調整を実施。全搭載科学観測機器の機能は正常。
10月2日 23:08 2基目の姿勢制御装置に障害が発生。
10月3日 8:30頃 姿勢制御装置(Y軸)に不具合が確認される。残りの1基の姿勢制御装置と、姿勢制御用の化学エンジンを併用して、適正な姿勢を維持。残り1基の姿勢制御装置(Z軸)には問題なし。燃料消費量の削減を検討する必要あり。
10月27日 イトカワの「衝」観測に成功。
10月27日 燃料の節約方法に目処がつく。エンジン噴射量を少量にして燃料消費量を抑えることで、帰還に必要な燃料を確保できることを確認。現在までに使った燃料は15kgで、あと50kgほど残っている。
11月1日 イトカワの全体マッピング終了。観測の結果、第1回目の着陸・試料採取点を、イトカワ中央部に広がるレゴリス帯である「ミューゼスの海」に、第2回の着陸・試料採取点を、イトカワの先端に広がる盆地である「ウーメラ砂漠」とすると発表。
11月4日 4:17 第1回降下リハーサル。高度約3.5kmから降下開始。高度約700m付近まで順調。
12:30 高度700mを数百m過ぎてから高度が分からなくなる。自律航法機能の出力に異常を検知したため、リハーサルを中止。リハーサル降下中、表面に接近して高精度の画像を撮影。それにより「ウーメラ域」に大きな岩石が非常に密度濃く存在していることが判明し、着陸・試料採取には適当でないという判断にいたる。
11月9日 第2回降下リハーサル。降下は2回にわたって実施され、最低到達高度は約70mと約500m。一度70mまで降りた後、もう一度ホームポジションからの降下を500mあたりまで行った。
第2回目の降下点で、ターゲットマーカ(署名なし)を分離。
着陸地点は2回とも「ミューゼスの海」とすると発表。
11月12日 第2回降下リハーサル。「ウーメラ域」近くの上空を迂回しながら通過したのち、「ミューゼスの海」への緩降下を試みる。
3:00 イトカワより高度約1.4kmから降下開始。イトカワの表面から約55mまで接近。
15:08 地上局から探査ロボット「ミネルバ」放出の指令発信。地上局から「はやぶさ」に指令が届くまで約16分間。(探査機と地球の通信の往復にかかる時間は約40分)
15:24 探査ロボット「ミネルバ」の分離。
「ミネルバ」は分離後に「はやぶさ」探査機の太陽電池パドルの撮影に成功。その後も18時間継続して「はやぶさ」との通信を保ちデータを送信。しかし、「ミネルバ」はイトカワ表面には到達せず、行方不明となる。
11月19日 21:00 第1回目の着陸にむけて、約1kmの高度から降下を開始。秒速約4 cm。
11月20日 4:30 高度450m。秒速12cmに上げて降下。
4:33 地上からの指令で最終の垂直降下を開始。目的とした着地点に「はやぶさ」を緩降下させることに成功。
5:00 5時前に、川口淳一郎プロジェクトマネージャーによる「GO」判断。
5:28 高度54m。149ヵ国88万人の名前を刻んだターゲットマーカーの分離命令を出す。
5:30 高度40m。署名入りターゲットマーカーを分離。ターゲットマーカーがイトカワ表面に到達成功。
5:47 高度35m。レーザ高度計から近距離レーザ距離計に切り替える。近距離のレーザー高度計(LRF)を使って制御しながら降下するのは初めて。
高度25mで、降下速度をほぼゼロにして浮遊状態(ホバリング)に入る。近距離のレーザー高度計を使ってホバリングするのも初体験。その後「はやぶさ」は自由降下。
5:40 高度17m。「はやぶさ」は、地表面の傾斜に自分の体の向きを合わせる姿勢制御モードに移行。
6:00 高度10m付近から高度データが変化しなくなる。何が起きているのかが分からない。管制室は緊張に包まれる。
6:10 第1回目の着陸。後ほどのデータ解析により、6時10分頃「はやぶさ」が着陸していたことが分かる。「はやぶさ」は2回のバウンド(接地)を経て、約30分間イトカワ表面に着陸。世界初の小惑星への軟着陸に成功。
6:30 「はやぶさ」の状況が分からないまま30分が経過。「デルタVを打とう!」と探査機の上昇指令の発信を川口プロマネが決断。
6:58 地上からの指令で強制的にガスジェットを噴かして上昇。(上昇までの間着地を継続していたことは後で分かる。月以外の天体において、着陸したものが再び離陸をなしとげたのは世界初)
セーフ・ホールド・モードにするためのコマンドが送られる。セーフ・ホールド・モードとは、太陽電池パドルの面を太陽に正対させたままスピンがかかっている状態。
イトカワの100℃を越す温度であぶられたせいか、通信系の増幅器が完全ではなく、しばらくビーコンモードが続く。「はやぶさ」がどのような状態なのかが分からない状態が続く。
中利得アンテナによる交信を回復。「はやぶさ」がセーフ・ホールド・モードに入っていることを確認。イトカワから数十kmの位置まで遠ざかっているもよう。
データ解析の結果、降下途中に何らかの障害物を検知したため、試料採取装置が起動しなかったことが判明。
11月25日 22:00 第2回の着陸にむけて、高度約1kmから本格的な降下を開始。
11月26日 6:00 第1回目とほぼ同じ「ミューゼスの海」の西方にむかって垂直降下開始。このフェーズにはいると基本的に地上からはリモートコントロールしない。「はやぶさ」の自律航行。
6:25 6時25分頃、「GO」コマンドを地上より発信。継続降下。
降下中に、20日に投下した署名入りターゲットマーカーを、イトカワ表面上に確認。別のマーカを投下すると、「はやぶさ」が2つの目印を見て混乱すると判断し、急遽、マーカーなしで降下させることにした。
6:53 高度35m。4.5cm/秒で降下中の「はやぶさ」は、レーザー高度計(LIDAR)の使用を予定通り停止。
6:54 高度40mに到達した地点で、探査機自身が毎秒6cmの減速を行う。高度30m地点で、レーザ高度計を近距離レーザ高度計に切り替える。
7:00 高度約7m。ホバリング。イトカワ表面の地形にならう姿勢制御のモードに移る。「はやぶさ」の垂直軸(Z 軸)を表面の傾斜と垂直になるよう姿勢の制御を行う。
7:04 近距離レーザー高度計は、距離測定モードから、サンプラー制御モードへと変更される。
下向きに毎秒約4cmの速度を加えて着陸降下。
第2回目の着陸。試料採取ホーンの変形により着陸を検知。3回目の接地に成功。
7:07 試料採取のための弾丸(プロジェクトタイル)を発射。採取量を増やすため、弾丸を0.2秒の間隔をおいて2発発射。着地速度は10cm/秒。サンプラーホーンはその時に10cmほど縮む。そこから離陸までの時間は約1秒。
「はやぶさ」は、地表面に鉛直上方に秒速50cmにて離陸。上昇。
7:35 管制室のコンピュータに「WCT」の文字。これは、着陸シーケンスがすべて正常に動作したことを示す。
11:00 午前11時前に、化学推進エンジンにトラブルが発生。イトカワの上昇中に姿勢の乱れが生じる。
燃料漏れの可能性があるため、燃料弁を閉じる指令を発信。
セーフ・ホールド・モードに入る。
11月27日 化学エンジンの推力低下が判明。
セーフホールド状態を解除する姿勢制御の指令が不調に終わる。姿勢や通信系など探査機の主要なシステムの機能が低下。
探査機内に漏洩した燃料の気化にともない、かなりの機器に大幅な温度低下が発生するとともに、発生電力の低下によりバッテリに深い放電が発生。搭載機器、システム全般の電源系が広い範囲でリセットされた現象が生じたと推定される。
11月28日 探査機との通信が確保できない状態におちいる。
11月29日 10:00 午前10時過ぎに、低利得アンテナによるビーコン回線が回復し、復旧にむけた運用を継続。「はやぶさ」搭載の推進系をのぞく各機器の状態は、正常。
11月30日 自律診断機能による電波の変調のオンオフによる復旧運用を開始。
12月1日 低利得アンテナで、テレメータデータの取得が行えるようになる。
12月2日 化学エンジンの再起動を試みる。小さな推力は確認できたが、本格的な始動にいたらなかった。
12月3日 探査機の姿勢が乱れていることを確認。緊急の姿勢制御法として、イオンエンジン運転用のキセノンガスの噴射による姿勢制御法の採用を決め、ただちに運用ソフトウェアの作成を開始。
12月4日 上記のソフトウェアが完成し、キセノンガスの噴射による姿勢制御を試み、成功。
12月5日 中利得アンテナでテレメータデータを受信できる状態にまで復旧。
試料採取のための弾丸発射の火工品制御装置の記録を取得。正常に弾丸(プロジェクトタイル)が発射されたことを示すデータが確認できず、11月26日に弾丸が発射されなかった可能性が高いことが分かる。
12月6日 探査機からイトカワまでの距離は、視線方向に約550km、地球からの距離は約2億9千万km。イトカワから地球方向へ、時速約5kmで相対的に飛行。
12月8日 再度の燃料漏れが発生。燃料等のガス噴出によると思われる外乱により、探査機の姿勢を喪失。
12月9日 地上の管制センターと探査機の交信が途絶える。
12月14日 当初計画されていた2007年6月の地球帰還が難しくなったため、飛行を3年間延長して、2010年6月に帰還させると発表。
探査機の運用方針は、通常の運用モードから救出モードへ転換。救出運用は今後約1年間継続する予定。この間に復旧できる確率は比較的高く、2007年初めまでに復旧できた場合は、その時点からイオンエンジンを運転して、2010年に地球帰還させると発表。
 2006年
1月23日 探査機からのビーコン信号が3ヶ月ぶりに受信される。
1月26日 探査機の状況が少しずつ明らかになってくる。
「はやぶさ」は12月8日の姿勢喪失後、太陽電池発生電力が極端に低下し、一旦電源が完全に落ちたもよう。搭載のリチウムイオンバッテリは放電しきった状態。かつバッテリの中の一部のセルは使用不能。また、化学エンジンは、すでに12月上旬には燃料をほぼ全量喪失した状態にあったが、この間さらに、酸化剤もあらたに漏洩し、残量が全くない状態。イオンエンジン運転用のキセノンガスは、12月に通信が不通におちいった時点の状態の圧力を保っており、残量は約42〜44kgと推定。
イオンエンジン駆動用のキセノンガスを用いて太陽方向(地球方向に近い)への姿勢変更制御を実地することを決定。
2月6日 キセノンガスを使った新たな姿勢制御プログラムの書き込みを行い、1日に2度ほどの速さで、太陽方向に探査機のアンテナ方向を向かせるべく姿勢変更の運用を行う。
2月25日 低利得アンテナを使用して、8bpsの速度でテレメトリデータを受信。
3月1日 距離計測の実施。
3月4日 中利得アンテナを使用して、32bpsの速度でテレメトリデータを受信。
3月6日 探査機の正確な位置・速度を3ヶ月ぶりに推定。「はやぶさ」は位置は、地球から約3億3千万km、イトカワから約1万3千km。
3〜4月 探査機内に漏洩した揮発性ガスの排出(ベーキング)を行う。
5月 イオンエンジンの起動試験に成功。
7月〜 太陽光圧(太陽の光のわずかな圧力)を利用した新しい姿勢制御の実施。これにより、姿勢制御に使用していたキセノンガスの消費量を抑える。
7〜9月 放電してしまったリチウムイオン電池の充電を行う。リチウムイオン電池は帰還カプセルの外フタを閉めるのに必要であるため。
 2007年
1月17〜18日 探査機内の試料採取容器を地球帰還カプセルに搬送、収納し、外フタを閉める。
2月 イオンエンジンの運転のための新しい姿勢制御方式を採用、試験を実施。
3月 イオンエンジンの試験運転を行う。
4月25日 イトカワの軌道を離脱。地球への帰還に向けた巡航運転を開始。
10月18日 イオンエンジンの連続運転による、復路の第1期軌道制御を完了。イオンエンジンを停止させる。
 2009年
2月4日 イオンエンジンを再点火し、地球帰還へ向け第2期軌道制御を開始。「はやぶさ」と地球との距離は約3億km。
11月4日 イオンエンジンが異常を検知し、自動停止。
11月19日 複数の装置を組み合わせることにより、イオンエンジンの推力を回復。帰還運用を再開する。
 2010年
3月27日 イオンエンジンによる第2期軌道制御を終了。地球の中心から約2万kmの位置を通過する軌道に入る。
5月12日 搭載の星姿勢計が地球と月をとらえる。
6月5日 オーストラリア南部ウーメラ地区に向けた、軌道修正を完了。地球までの距離は約360万km。
6月9日 ウーメラ地区の着陸想定地点に向けて、さらに詳細な誘導を実施。地球までの距離は約190万km。
6月13日 19:51 カプセル分離成功
22:02 地球を撮影
22:28 水平線の向こう側に入り、内之浦局から交信できなくなる。通信途絶。
22:51 大気圏再突入。それとともに「はやぶさ」の本体は消滅。
23:08 オーストラリア南部ウーメラ地区の砂漠に、カプセルが着陸。7年にわたる旅を無事に終えた。
23:56 ヘリコプターからカプセルを発見。落下予想地点のほぼ中心に着陸していたことが分かる。
6月14日 16:08 カプセル回収
6月15日 ヒートシールドを回収 
6月17日 23:23 帰還カプセルが羽田空港到着
6月18日 2:15 JAXA相模原キャンパスに帰還カプセルが到着
6月24日 サンプル容器の開封作業を開始。
7月6日 サンプル容器から微粒子の採集を開始。
11月16日 サンプル容器から採集された微粒子のほぼ全てが地球外物質であり、小惑星イトカワに由来すると発表。
 2011年
1月 「はやぶさ」が持ち帰った微粒子の分析が始まる。
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